介護生活No17「介護と仕事の両立」2

日々、認知症になった妻の介護と介護保険施設の運営

もう、10年になります。

脳血管認知症になった妻と一緒に残りの人生を楽しもうと色々な社会資源(デイサービス、訪問看護、病院介助、保険外サービス等)を利用し、仕事もしながら人生を楽しんでいます。

妻が倒れ、介護という現実が私に降りかかり、ひとえに妻の病状を回復させたい一心で、平成15年単身赴任をしていたところから、通勤圏内に異動し、可能な限り残業を減らし、日々、妻の病状回復の為、介護経験もない私が見よう見まねで妻を介護し、日々、リハビリにも力を注ぎ、介護施設や病院の協力の下、介護という現実を身を持って経験しました。

その中から、介護現場に人としての不信感が募り、妻の介護をして3年目に会社を退職、1年後法人を立ち上げ、介護保険事業所を開設(グループホーム)しました。

また、4年後に事業所をもう一か所開設し、現在デイサービスと保険外サービスを実施しています。

地域の中で人知れず苦労をされている方々の意見を聞き、

 

「少しでも介護される方に自分らしい人生を送って貰いたい」

 

と枠にはめない関わりを持とうと日々現場に入っています。

ほとんど寝る時間もない状態です。

関わりを持たせていただいている方々の表情に癒されながら人任せにせず、自ら汗をかき、多くのスタッフに支えられながら仕事をしています。

その反面、妻と一緒にいる時間が、日々、少なくなる現実があります。

昔を思い出し、これではいけないと感じ出来ることと言えば、妻の寝顔を見て、今日も安らかに寝ているなぁーと安堵する事。

私の顔を見れば

「ボケなす、しっかりせぇ」「はよ死ね」

と叱咤する言葉に「絶好調や」と感じる事しかできませんが、若い頃の私と違い心底腹の立つ事はありません。

妻の言葉で、やる気になり、日々介護の仕事に邁進する力を与えてくれていると感じています。

私の場合、妻の介護を通して認知症を知り、それを仕事にする事が出来ました。

働き盛りで「どちらかを取るか」となると、現実の自分の生活を考えてしまいがちになるのは当たり前であり、社会がまだまだ両立できる環境にはありません。

「介護と仕事の両立」で私の場合は、「これからは認知症になった妻を」と考え、目標を設けることが出来たからこそ自営の道を選択することが出来ました。

これからも、夫婦としての絆を大事にし、

「こうしておけばよかった」

という後悔の念が生まれないよう仕事にも介護にもその思いを乗せ、いろいろな人との出逢いを頂ける環境に感謝していきたいと思います。

介護という先の見えない苦悩と、生活の為に仕事をせざるを得ない現実。

この狭間で犠牲になるのは、次は私かもしれない。

そうなった時、諦めてしまうような人生ではなく行政と共生しあいながら介護と仕事が両立できる時代に向け介護サービスの構築に貢献できればと考えています。

 

「ぽーれぽーれ」通巻356号2010年3月25日発刊より抜粋
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