介護生活No6「笑顔がみたくて・・・」

Aさん、女性86歳。特養に入って一年半。入所当時は等介護5でしたが、めきめき元気になり、車いすながらも要介護3に躍進。若くしてお主人に先立たれ、長い一人暮らしの日々を支えたのは農業と得意のお料理。いつも手料理をご近所に振舞っておられたそうです。

そんなAさんとのふれあいの日々を、担当の介護職員さんが語ってくれました。

私がこの施設で介護を初めてもうすぐ5年になります。5年が経つ今でも、やっぱり介護って、認知症って奥が深いなぁと思う日々です。
自由奔放な入居者さんの話
私が担当しているAさんは、一人暮らしを長年してきたという、一言でいえば
「自由奔放なおばあちゃん」です。
機嫌が悪いと話もろくに聞いてくれず、ふらふらした足取りで歩き、付き添いや介助も強く拒否。
その自由なAさんが初めて排泄に失敗したときでした。
いつも強気なAさんが、着替えを手伝っている私に
「ごめんのぉ・・・。ごめんのぉ・・・。」
と言い、大泣きしたんです。
私も思わず涙がでました。そして思いっきりAさんをぎゅっと抱きしめました。
介護ってすごいです。
介護している私たちも利用者さんから、たくさんのものをもらってるんです。
愛情を溢れんばかりにもらってるんです。
今は自由にしてもらっているだけがAさんにとっていい介護とは思えず、Aさんが楽しいと思える時間を作ってあげたくて、一緒に大好きなメロンパンを買いに行ったり、好物のうどんを食べに行ったり、みそ汁を作ったりしています。
みそ汁くらい私だって作れますよ。
けど、何にも出来ないふりをして教わるんです。
するとAさんの表情もいきいき。
「そのうちにできるようになるでの。」
と言ってくれます。
最近は私の名前を覚えてもらうのに一生懸命です。
当然すぐ忘れてしまいます。
けど、それでも一緒に言ったお店での出来事、みそ汁や漬物を作ったことなどは覚えててくれます。その相手が私だとは覚えていませんが・・・。
けれど、1年たっても
「あの時は楽しかったのぅ。」
と言ってくれます。
私はそれで十分満足してます。
だから、もっともっと楽しい時間を過ごしてもらいたいです。
私は利用者さんとは、この施設の中の家族だと思っています。
やっぱり家族には笑顔でいてほしいですもんね。
「ぽーれぽーれ」通巻335号2008年6月25日発刊より抜粋