介護中の皆さんへのお便りNo1「物盗られ妄想の標的にされたAさんの手紙」

物盗られ妄想の標的にされ、実家に帰れなくなったAさんの手紙

一人暮らしの母の様子がおかしいと思い始めたのは、貯金通帳や印鑑を何度も紛失し、再発行をしていることに気付いたことがきっかけです。

再発行の手続きには、母が自分で郵便局や銀行に出向き行っていたので、「まだしっかりしている」と思い込んでいました。

しかし、紛失が度重なるため、通帳と印鑑を私が預かることを申し出ました。

母自身も通帳を何よりも大切なものと思って、しまっては出し、しまっては出ししたようで、再発行されて間がない新しい通帳にも関わらず表紙がボロボロでした。

母も、当初は私の申し出に「そうしてくれた方が助かる」と了解してくれたのに、すぐに「通帳を返してお前が持って行った」と電話をするようになりました。

私は「母がそんなことを言うなんて」と驚いて通帳をすぐに返しました。

でも、その通帳はやはり、すぐに行方が分からなくなり、また母から「通帳を返して」と電話がかかりました。

「返したよ」と伝えても信じてくれません。

母の被害妄想はエスカレートし、薬やテレビのリモコンや自宅のカギなどがなくなると、全て私が犯人となりました。

母が警察に通報し、警察に事情を聴かれることもたびたびでした。

母は本気で私が実家をつぶそうとしていると考えているようでした。

そんな状況ですから、母と顔を合わせるのがとても辛くなり、どうしても実家に帰ることが出来なくなりました。

母を恨み、「どうにでもなれ」と投げやりな気持ちになりました。

受診もお薬の管理もケアマネジャーに頼み、ヘルパーや訪問看護を利用しました。

受診に行かない、と拒否するときは、母の弟であるおじさんに頼みました。

 

「アルツハイマー型認知症」の診断がついたときは、全部病気のせいだったと、ほっとしました。

 

と同時に、認知症はとても怖い病気だと思いました。

精神科の受診も初めは拒否がありましたが、最近は素直に出かけています。

精神科の先生からは「一番信頼する、一番世話になっている人に被害妄想が向けられる」という話をお聞きしましたが、心の底から納得はできません。

母の被害妄想は続いていますし、私は今でも実家に入ることが出来ませんが、キーパーソンではいようと思っています。

必要なものがあると、ケアマネジャーさんから連絡が入り、私が購入してヘルパーや看護師がいる間に届けるなど工夫しています。

「それが病気なんだ、病気のせいなんだ」と自分に言い聞かせるようにしています。

 

介護中の皆さん、認知症は介護者の心にもダメージを与える大変な病気です。

介護者の方も、自分の体と心の健康を維持することを考え、「割り切ること」「人に頼むこと」です。

自分のできる事をやっていけばいいと思いますよ。

2025年に向けて「認知症 聞いてほしい 聞かせてほしい 仲間がほしい」より抜粋

 

 

 

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