妻の笑顔
病室へ入ると、妻はじっとこちらを見ている。
何か反応がない限りにらめっこの状態が続く。
しばらくするとたいていニッコリ笑顔が返ってくるのです。
笑顔になった時は、いつも来る夫だと気付いてくれるのであろうか。
時には、
「父さんやで」「父さんがきたんやで」
と言ってみるが、笑っているだけで寂しい思いがするひと時です。
しかし、その笑顔が自分にとっては嬉しく、ホッとするひとときでもあります。
妻は61歳。6年前の退職後にアルツハイマー病と診断されて以来、病気の進行を遅らせるアリセプトなど数種類の薬を服用しながら、生活してきました。
要介護4のランクです。
そして、昨年10月に脳梗塞による右上肢および両下肢機能障害を持ち、この4月に身体障害者1級の手帳が交付されました。
現在は、アルツハイマー病、脳梗塞による後遺症、糖尿病と三つの大きな病を背負って入院生活を送っています。
自分(父さん)は71歳。
現在3期目となる町会議員を務めながら、妻の介護(介助)をしています。
同居家族は、息子夫婦と孫の5人です。
入院中のこと
入院中の妻の食事は、朝は胃ろうによる注入食。
昼と夜は普通食ですが、おかずは細かくきざんであります。
昼・夜の食事も6割ぐらいしか食べれないと胃ろうで補います。
なかなか飲み込めないので、1時間余りの食事となります。
特別の用事がない限りは、車で20分かけて、食事の介助に出かけます。
ほとんど1日2往復の毎日となります。
リハビリは最初の数カ月間は月曜から金曜までの毎日でしたが、4月からは週3回だけになりました。
リハビリといっても、座る、立つ(補用ベッド使用)、足腰のストレッチや障がいのある右手や肩のストレッチであります。
座る・立つ事は機能訓練には欠かせない事でありますが、脳に刺激を与えるためには、極めて有効であることをTVで知りました。
以後、リハビリのない日は、出来るだけ座らせることにしています。
妻のアルツハイマー病については、最初は噂としてだれからともなく耳に入ってきました。
「まさか」という思いでいましたが、妻が退職時の願いが書けないのには愕然としました。
その後、診療所の医師から判断力が乏しいので専門医の診察を受けてくるように言われて、すぐMRI検査を受けて、アルツハイマー病による若年性認知症と分かりました。
5年前の事です。
脳梗塞で入院するまでは、認知症もかなり進行していて、常に付添人が必要な毎日でした。