介護生活No18「介護と仕事の両立3」

上司の理解に感謝して「満足した母の介護」

昨年、亡くなった母の事を話します。

自宅での最期を決意した理由

母が末期がんと診断されてから、その病気の進行は早く、見る見るうちにやせ細り、食事さえもいらなくと言う日が度々あるようになりました。

入院中に家の様子を一度も聞かなかった母が、

「もう家にはかえれないね・・・。」

とつぶやいた事を聞き、私はとっさに

「帰ろうか、大好きな家で死にたいもんね」と答えていました。

母に、死という言葉を直接投げかけた事はなかったのですが、

 

「そう、家で死ねるの」と

ほっとした顔を見たときに、親子なんだからもっと早くに言ってみてもよかったと感じました。

 

ただ、24時間の点滴をしたり、癌の痛みが出たときにどう対処するのかさっぱりわからないので退院への不安や、介護する私の仕事は辞めるべきかどうか悩みました。

でも母の為だから辞めても後悔しないと思い、勤務先の上司に報告すると、

「辞めずに、長期の休暇をとればよい。お母さんの介護はあなたにしかできないし、この会社もあなたを必要としているのだから」

とびっくりすることを言われ、涙ながらに感謝し、休暇を頂く事になりました。

自宅での様子

退院した母は、からだの調子のいい時に、本当に愛おしそうに柱をなでながら、仏間に座りながら、人生のこまごましたことを話してくれました。

とりとめもない話から、自分たち家族を大事に育ててくれたことを改めて感じ、あのゆったりした時間が母と過ごした最高の時間だったと思います。

ただ、体の調子が悪い時も多く、訪問看護ステーションのお世話になり、楽な体制を教えてもらったり、私までが不安な顔をしないよう励ましてもらったりしました。

主治医の先生に連絡するかどうか迷うときには

「いつでもどうぞ」

の言葉に甘えて、ステーションの看護師さんは夜中も電話をかけ相談したこともあります。

誰かがいつでも相談にのってくれたことは大変心強かったです。

母は退院後たった3週間しか家で過ごせませんでしたが、看取りの時に何時間も看護師さんがずっとそばにいてくれ、母が死ぬという事を時間の経過とともにわかったというか事実として受け入れた自分がいたように思います。

在宅看取りを考えている仲間へ

私は会社の理解があり、介護休暇の制度を使いました。

復帰後は上司や同僚に感謝し、仕事で恩返しができればと思う日々です。

友人は、上司の理解はあったのか、復帰しづらくなかったかなど聞いてくることもありました。

あの時は会社を辞める事しか考えておらず、ある意味正常ではかった私に冷静な判断をしてくれた上司がいたので、休めたという結果になりました。

介護が必要となった時に、家族も動揺しています。

介護休暇があるとアドバイスをくださる方がいれば、現在の生活を継続できる安心とともに介護に専念できる心の余裕も生まれます。

母とゆったり過ごせた時間は、満足した介護生活であったと感謝しています。

 

「ぽーれぽーれ」通巻357号2010年4月25日発刊より抜粋