介護生活No4「母の心に寄り添う」

認知症の母を一人で介護

認知症の母を、一人息子が一人で介護しています。
母の状態は、認知症が発症してからおおよそ14年で、要介護4・精神障がい1級です。

母が認知症の診断を受けたのが2001年。それから5年間、デイサービスを利用して在宅で介護をして、その後1年半専門病院へ入院し、昨年10月より特別養護老人ホームに入所しています。

現在は、その母の元に毎日通っています。

特別養護老人ホームでの暮らし

特養での施設介護なので、私はほとんど介護らしい介護はしていません。
ですが、特養へ通う中で、私なりに気にかけていることが幾つかあります。

  1. スタッフの方と意思を通じ合う様にする。
  2. 母にとって安心していられる環境をつくる。
  3. 母の心に寄り添う。

もう少し詳しくこれらの事を説明すると、次のように言う事が出来ます。

① スタッフの方と意思が通じ合うようにする。

母は、この特養に入ってすぐ、高熱を出して40日間入院する事になりました。

その後も、食べ物がうまく食べれなくなるという事が起こりました。

この時は、職員の方々が「こうしたほうが良い。ああしたほうが良い」と知恵を絞って、いろいろと手を尽くしてくださり、今は回復しています。

職員の方が知恵を絞って、素早く行動に移して頂いたことが、母の回復に繋がったのだと思います。この時の経験から、職員の方が行動に素早く移れるように私に話を掛けやすいようにする事を心掛けています。

② 母にとって安心していられる環境をつくる。

特養へ入所していますので、物理的な環境をどうのこうのいうわけではありません。

母にとって一番不安になることは、私が母の元から遠くはなれてしまって、一人置いて行かれるのではないかと感じることです。

実際に特養という私とは生活場が違うところで生活を送っている母に、ここにいれば良いのだよと思ってもらえる雰囲気を作っています。

具体的には、職員の方々が私に話しかけやすくしたり、他の入所さんが私に話をかけて一緒に笑ったりしています。

そして、足しげく母に会いに行くという事です。

ここにいれば、必ず私に会える。

職員の方々も母に「もうすぐしたら兄ちゃん会いに来てくれるよ」と声をかけてもらえるようにして、私が職員の方々や入所者の方々と馴染んでいる様子を母に見せてあげるようにしているのです。

③ 母の心に寄り添う

この事が、私が一番心を砕いている事です。

母の認知症もかなり進んでいます。

漠然と聞いていただけでは、人によっては「あっちの世界へ行った」と言われても仕方がない事を言っています。

ですが私は、母の言っている言葉を「変な事を言う」というのではなく、100%その言葉を受け入れるようにしています。

特に母の過去に生活歴に当てはめて、きっとこういう事なのかな?と言うストーリーをくみ上げて、自分でもその世界に浸る様にしているのです。

そうすると、母の言っている言葉が、何かおとぎ話でもしているかのように聞こえてくるのです。

そして、こちらが、その言葉に耳を傾けて、話を想像して、笑いながら母に接してあげるようにしています。

これらの事に気を付けて母に会いに行って、現在、母は穏やかに毎日を送っています。

職員の方に、私が居ない時の様子を聞いても「落ち着いている」と言ってくださります。

そして何よりも、私が会いに行ったときに、きらきらと輝く笑顔を見せてくれます。

そして、私だけではなく、母の介護をしてくれている職員の方々にも、目を輝かせて笑顔を見せてくれています。

かつての主治医から、認知症の方に接する時に、主介護者は話の50%、従介護者は話の100%に「はい」と答えるようにしてくださいと言われました。
また100%「はい」と答えられるのは、時間的に区切りがあるからという事を忘れてはいけないとも。現在の私は、特養の母に会いに行って一日に2時間程度しか顔を合わせていないので、100%「はい」と母の言う事を肯定的に捉えられるのです。
「ぽーれぽーれ」通巻334号2008年5月25日発刊「わたしの介護生活」より抜粋

 

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