介護生活No11「夫の父からの宿題・・・」

義父と私

夫の父は山でこけて寝たきりになった。突然の寝たきり。部屋の窓から山や畑を見ていた。

通り人を捕まえて

「ろくでもない嫁をもろて、みんな困っている。」

と言っているのが聞こえた。

 

親戚の人に

「おじいちゃん。しっかり面倒みたってよ。ほったらかしにされとるらしいなぁー。」

と注意された。

 

夜中に「財布がない」と家族全員が起こされた。

一時間ほど探したのに見つからなく、父が言った。

「この家に泥棒は一人だけしかおらん。他人は一人だけや」と。

わたしの事だ。夫も怒ってベッドから引きずりおろした。

 

お尻の下に黒い財布があった。

 

私の頭の中は、なぜ?なぜ?

おかゆも、野菜の煮たものも、魚も欠かした事がない。

通院も一緒に行っている。

夜中に目覚まし時計をかけておむつ替えもしている。

会社の昼休みにも毎日帰っている。洗濯も掃除も・・・。

これ以上何をしたらみんなの言ういい嫁になれるんだろう。

 

胃痙攣になって病院に運ばれてた。

 

夫が父に「こんだけ大事にしてもらっとって」と怒っている。

 

誰がなにを言ってくれても介護トンネルの真ん中にいた。

 

 

「逃げ出したい」

 

舞鶴の海まで車で走った。

 

はっと気が付いた。

 

「子供が返ってくる時間だ」

 

心も体もクタクタになって仕事を辞めた。

父とゆっくり関わることができた。

半年後に「お前のええようにしてくれたらいい」「世話になった。」

と父が亡くなった。

 

お父さん、本当は何をしてほしかった?
お父さん、私じゃなかったら心安らかに過ごせた?
お父さん、私に足りないものがあったし、夜中に怒ったん?

 

父からもらった宿題の答えは見つかっていない。

あれもしてあげたらよかった。

これもしてあげればよかったと後悔の中。

今も私は介護トンネルの中でもがいているのかもしれない。

 

「ぽーれぽーれ」通巻339号 2008年10月25日発刊より抜粋