怒りっぽい父を介護してきたBさんの手紙
認知症の実父を介護していて、一番つらかったのは「怒りっぽい」ことでした。
とにかく、すぐカッとなり、怒りだし、大声や時には手や足も出ました。
父は、排泄の失敗や便を触ったり、最後は食事がうまく呑み込めなくて、誤嚥性肺炎を起こしたり、それはそれで大変でしたが、今から思うと、この「怒りっぽい(易怒性)」が一番つらかったように思います。
父に何とか穏やかに過ごしてほしい、家族もなんとかうまく対応したい解決したいと必死でした。
介護の経験者から話を聴いて参考にしながら、父が怒り出した時の対応を家族みんなで話し合い、対応の方法を申し合わせました。
それは、父が怒り出したら、つられて大声を出すのは逆効果。
怒り返さず、なるべく静かに対応しよう、というものでした。実際そのように対応すると父も穏やかになることがありました。
しかし、毎回うまくいくというものではありませんでした。
最後には、穏やかになる薬を出してもらいましたが、今から思うと、それによって認知症がすすんだように思います。
家族の都合で薬に頼ったことを申し訳なく思うことがあります。
「その人の思いに寄り添う」と、言葉では簡単ですが、難しいことです。
「怒ったり、避難したり、説教はしない」と言うことが大切であることは理解できますが、実際に肉親の介護となると、感情的にならないということはとても難しく、覚悟がいることだと思います。
信頼できる主治医を見つける事も大事だと思いました。介護をしていると、必ず、壁にぶつかったり、もう限界、と思うことが出てきます。
そういう時に相談できる主治医がいるととても心強いです。
相性の合う主治医を見つけることが大切だと思いました。
一生懸命働き、家族を養ってきた一家の大黒柱、大切な父が「認知症」という病気になってしまい、「かわいそう」という気持ちが看取った今でも湧いてきます。
でも、最後まで自宅で過ごすことができたことは「よかった、幸せだった」と父も思っていると思います。
亡くなった時、父はとても穏やかな表情でした。私たち家族が必死に「何とか穏やかに過ごしてほしい」と思った願いがかなったように思いました。
今でも、その表情を思い出します。